北海道のほぼ中央、大雪山連峰の豊かな自然に抱かれた東川町。写真の町としても知られるこの場所に、2025年8月、新たなウイスキー・ジンの製造拠点「丹丘(たんきゅう)蒸留所」がオープンしました。
この蒸留所の最大の特徴は、自治体が施設を整備し、民間企業(香港の資本を含む)が運営を担う「公設民営」という全国的にも珍しい形態をとっている点です。東川町の清らかな天然水と、地域の資源を活かした新たな産業創出を目的に設立されました。


丹丘蒸留所の製品
現在、丹丘蒸留所ではクラフトジンとウイスキーの製造が行われています。

- 「雪の窓(YUKI NO MADO)」ジン: 最初にリリースされた製品で、東川産の素材を活かした華やかな香りが特徴です。
- シングルモルトウイスキー: 現在、熟成の真っ最中です。東川町の厳しい冬と美しい四季を経て、どのような琥珀色の一滴に仕上がるのか、今から期待が高まります。
丹丘蒸留所では最新のデジタル技術と北海道の自然素材を融合させ、独自のウイスキー造りを行っているようです。
1. 製麦・粉砕:収量を追求した「ハンマーミル」
まず驚かされるのが、麦芽(モルト)の粉砕工程です。通常、ウイスキー造りでは殻を残すローラーミルが主流ですが、ここではハンマーミルを採用。麦芽をあえて細かく粉砕することで、アルコールの抽出効率(収量)を最大化しています。また、使用するのはノンピート麦芽のみ。スモーキーさよりも、フルーティで万人受けするクリーンな味わいを目指すという設計思想が明確です。
2. 糖化・発酵:道産杉桶による「乳酸発酵」の魔法
粉砕された麦芽は糖化を経て、計6日間という長い時間をかけて発酵されます。
- ステンレス槽(2日間):まずは衛生的なステンレス槽で基礎となる発酵を進めます。
- 北海道産杉桶(4日間):その後、道産杉で作られた木桶へと移されます。狙いは、杉に住まう乳酸菌による乳酸発酵。
発酵エリアにはクラフトビールのような華やかでフルーティな香りが漂っており、この「杉桶」の工程が、酒質に複雑な奥行きを与えると考えます。
3. 蒸留:デジタルが生む純度「iStill」

蒸留工程の主役は、オランダ製の革新的なデジタルスチル「iStill(アイスティル)」です。
伝統的な銅製ポットスチルとは異なり、温度や圧力を高度なプログラムで自動制御できるとのこと。てクリアで再現性の高い原酒を安定して生み出すことができるのかもしれません。
4. 熟成:王道から「白樺」への挑戦
蒸留された原酒は、多様な樽に詰められ、東川の四季の中で眠りにつきます。
- メインの樽:王道のバーボン樽を中心に、ポートワイン樽、シェリー樽を運用。
- 北海道の個性:ジャパニーズウイスキーを象徴するミズナラ樽も備えています。
さらに特筆すべきは、今後予定されている「白樺樽」を用いた実験的な熟成です。北海道らしい白樺がウイスキーにどのような影響を与えるのか、注目です。
5. 仕込み水:大雪山の恵みを裏庭から
これら全ての工程を支えるのが、蒸留所のすぐ裏手にある井戸から汲み上げられる天然水です。大雪山連峰の雪解け水が長い年月をかけて濾過されたこの水は、極めて清らかで、東川町ならではの生命線とも言える重要な要素となっています。
今後の動向と期待:地域と世界を繋ぐ場所へ
今後は、9月以降に開始された見学ツアーや試飲体験を通じて、旭川空港からほど近い立地を活かした観光拠点としての役割も期待されています。
数年後のファーストリリースが、今から待ち遠しいですね。

